Cogito Ergo Sum.

我思う故に我あり

逆算思考

 去年も一昨年もその前の年も、10km楽に走れるようになるために僕は3週間を要した。

 今年も去年同様3月半ばにジョギングを再開したのに、3月末にひいた風邪が長引いて約1ヶ月のブランクがあいてしまった。4月下旬から再び走り始めたが、今年は10km楽に走れるようになるのに今週いっぱいかかる。その後、6月7日(日)の今季初フルマラソンまでに3週間しかない。

 去年の経験から言うと、フルマラソンを走れ切れる最低条件は「ハーフ(21.1km)ならいつでも走れる」という自信をもっていること(あるいは、そういう自信をもてるほど走り込んでいること)。3週間でそこまでもっていけるか。しかも、大会直前の1週間は疲労を残したくないので、長い距離は走れない。実質的には今月末までに何とかしておかなくちゃならなかったのに、再スタートが遅れてしまった…。

 長い間、こういう「逆算思考」をすることができなかった。大学院生時代も、例えば、「いついつまでに実験を始めないとならないので、そのためにはいついつまでに予備実験を終わらせる必要がある。そのためにはいついつまでに実験準備を整えておく必要があり、そのためには…」という逆算思考が必要とされることは多々あった。ところが、僕はこれが全くできなかった。できないものだから、常に一夜漬けで何とかギリギリごまかしていた。逆に言うと、一夜漬けで何とかなってしまったから逆算思考しないで済んだとも言える。しかし、結果として僕には一夜漬けで何とかなるレベルのことしかできるようにならなかった。

 マラソンに関して(多少)逆算思考ができるのは、マラソンには一夜漬けが通用しないことが(自分自身の経験的に)わかっているからだ。本番1週間前になっていくら慌ててももうどうしようもない。逆に言えば、3週間かければ10kmを楽に走れるようになるし、その後も走り続けていれば「ハーフならいつでも走れます。何なら今から走りましょうか」と言えちゃうくらいの自信はつく。一夜漬けは効かないが、ゆっくり1時間強走るジョギングを数ヶ月続けていれば、フルマラソンを完走できるのだ。大事なのは「火事場の馬鹿力」による爆発的なパワーではなく、単に日数なのだ(面白いことに、走る距離が5kmでも10kmでも15kmでも、3週間かければ10kmを楽に走れるようになる。「スタミナ」というのは要するに「筋肉に対する酸素供給能力」のことらしいが、毛細血管の拡充に3週間かかる、ということなのだろうか?)。

 「ここ一発の集中力」より「かけた時間」の方が大切なら、当然「かけた時間」志向の発想をするようになる。マラソンに関して僕が逆算思考ができるのはそういうわけだ。


※ このまま論を進めていくと、「もし大学院生時代に取り組んでいた課題が『かけた時間に比例して結果が出る』タイプのものであったのなら、僕にも逆算思考ができたはずだ」ということになるんだけど、それも何か嘘っぽいな〜。