Cogito Ergo Sum.

我思う故に我あり

味わいたい

 『プログラマの数学』(結城浩 ソフトバンクパブリッシング 2005年)

 僕はこの本をとても面白く読んだのだけど、アマゾンのカスタマーレビューでの評価はそんなに高くない。「文系・素人向けで、理工系・プロには不要」といった評価が多いように思う。

 何を面白いと思うかは当然人それぞれだから、不要だと思った人にとっては不要な本なんだろう。だけれども、僕はこれらの本を面白いと感じることができたことを幸運に思う。(だからと言って、これらの本を面白いと感じなかった人を不幸だと思うわけではない。)

 例えばこんな感じだ。いつだったか実家に帰ったら台所にニンジンが置いてあった。その日の夕食の材料だ。これがまた実に綺麗なオレンジ色だったのだ。ニンジンってこんなに綺麗だったっけ?と驚くほどだった。ニンジンについた土の匂いもよかった。まるで生まれて初めてニンジンを手にとったかのように、その色や匂いにすっかり感動してしまった。

 もちろんニンジンの色も匂いも味も皆知っている。じゃニンジンを知っている人にとってニンジンについて語る本は不要なんだろうか?

 それが中学数学レベルでもいいから、数の世界の美しさ・不思議さを味わいたい。1の2乗、11の2乗、111の2乗、1111の2乗、11111の2乗、それぞれ計算すると、1、121、12321、1234321、123454321になる。こういう法則性のもつ美しさ・不思議さを味わいたい。僕にとっては知ってるか知らないかが問題ではない。数の世界の楽しみ方を伝えるのは難しい(だから世の中数学嫌いが多い)。読者と味わい方を共有することを目指す本として、この本を高く評価している。