Cogito Ergo Sum.

我思う故に我あり

タイの数

 昔、大学生のとき受けた文化人類学の概論の授業で、「人口(人口密度だったかな)とそこで生じるケンカ等の争いの数の関係を調べてみると、人口がn倍の集団で起こる争いの数はn倍ではなくもっとずっと多い、という話を聞いたことがある。で、過剰な対人接触というものは人間にとってストレッサーなのである、という結論だったと思うんだけど。

 だけどこれ、バカげた結論ではないか。ある集団の構成メンバーの数がn倍になったとき、その集団における2者関係の数はn倍じゃ済まないんだから。k人の集団における可能な全ての2者関係の数はkC2 = k(k-1)/2だから、

 メンバー数が00002、2者関係の数は00000001。
 メンバー数が00003、2者関係の数は00000003。
 メンバー数が00004、2者関係の数は00000006。
 メンバー数が00005、2者関係の数は00000010。
 メンバー数が00006、2者関係の数は00000015。
 メンバー数が00007、2者関係の数は00000021。
 メンバー数が00008、2者関係の数は00000028。
 メンバー数が00009、2者関係の数は00000036。
 メンバー数が00010、2者関係の数は00000045。
 メンバー数が00100、2者関係の数は00004950。
 メンバー数が01000、2者関係の数は00499500。
 メンバー数が10000、2者関係の数は49995000。

 全ての2者関係の数はメンバー数に比例しないのは明らか。メンバー数が10倍になれば、そこに含まれる2者関係の数はだいたい100倍になることがわかる。

 ということは、メンバー数が100人と1000人の集団において、そこで起きている争いの数の比が1:100程度なのであれば、単に2者関係の数に比例しているだけ。つまり、人が多いとキレやすくなる、というわけではないのだ。人口比が1:10でケンカの比が1:100だと言われると、10倍キレやすくなったかのように見えるけれども。

 もちろん、メンバー数が大きくなればなるほど、可能な2者関係のうち実際に2者関係が存在する比率は小さくなるだろうから、実際に存在する2者関係の数を考慮しないといけないわけだが。