Cogito Ergo Sum.

我思う故に我あり

ホリエモンと心の時代

 去年、小沢牧子の『「心の専門家」はいらない』を読んで印象に残っていたのは、昨今「心の時代」なんて言い方がはやっているが、それは「物資的な豊かさよりも精神的な豊かさが重視される時代」というような意味では決してなく、結局「心に関するサービス産業が成立する時代」という意味に過ぎない、という指摘だった。

 最近、そのこととホリエモン的態度のつながりが見えてきた。彼は「金で買えないものなんかあるはずがない」というようなことを繰り返し言って多くの人の反感を買っていたようだけど、「心に関するサービス産業が成立する時代」にいつまで「人の心を金で買うことはできない」なんて言い続けていられるのだろうか。何か大きな事件が起きるたびに「専門家による心のケアが必要だ」なんて新聞に書かれているのを見るにつけ、「それって、専門家にお金さえ払えば人の心もどうにでもなる、と思っているってことでしょう?」と思ってしまうのだ。

 ホリエモンが嫌われたのは、彼の意見に同意できないからではなくて、単に彼の傍若無人な態度が嫌だったってことだったんだなぁと思う。「金で買えないものなんかあるはずがない」、それが「心の時代」。