Cogito Ergo Sum.

我思う故に我あり

2足歩行ロボットを見て想う。

 僕は昔から夢のない子供だった。プロ野球選手とかパイロットとか、なりたいものがなかったのである。

 そんな僕が初めてやってみたいと思ったのは、早稲田大学の工学部電子工学科に進学して2足歩行ロボットの開発をすることだった(当時、刊行されたばかりのFocusだかFridayの新聞広告で、早稲田で開発された下半身だけの2足歩行ロボットの写真を見かけたのがキッカケ。1981〜1982年頃?)。

 我々人間はかなり激しく酔っ払っても千鳥足程度の歩行はいつでもできるが、当時のロボットには千鳥足すら困難だった。2本足で歩くというのはこんなに難しいものなんだなぁと思ったものだ。

 それがホンダのアシモができて、SONYの小さなロボットができて、ついにはアマチュアロボット愛好者ですら2足歩行ロボットをつくることのできる時代になってしまった。今や10万円以下で2足歩行ロボットのキットを買える時代である。ムラタセイサク君なんて、人間より上手に自転車に乗る。

 だけど、ちょっと待って! 2本足で歩くことはやはり簡単なことではない。ちょっと腰を打ったり(若いロボット工学者はギックリ腰を経験すべきだと思う)、体温が普段より5度も上がれば、人間は2本足で歩けないのだ(と言うか、体温が5度も上がれば、生命の危機に瀕しているとさえ言える)。2本足で歩くってことはそんなに簡単なことじゃないんだよ〜。

 2足歩行ロボットを見て育った世代には、2本足で歩くことの難しさが直感的にはわからないかもしれない。火を起こすことの難しさが僕には直感的にわからないように。