Cogito Ergo Sum.

我思う故に我あり

「インターネット図書館」みたいなものに期待

 僕が初めてレンタルビデオ屋というものを知ったのは80年代半ばだったと思う。

 ビデオデッキが家庭に普及し始めたのが80年代前半くらいからで、書店でレンタルビデオコーナーを設置していたのを見たのが最初だ。90年前後には、レンタルCDレンタルビデオの専門店がたくさんできていた。書店や古本コーナー、中古ゲームコーナーと併設された大型店がお目見えしたのは90年代半ばではないかと思う。

 「1週間レンタル」が始まったのも90年代半ば。その頃のレンタルビデオ屋の品揃えには、「過去の遺産を保存する」という「図書館テイスト」がまだあった。旧作コーナーに並んだパッケージをジックリ吟味し、ピンとくる作品を探すのを楽しんだ。

 ところが、90年代後半から、話題の新作を大量に並べて、旧作コーナーのスペースを減らす方向性が顕著になってきたように思う。また、いつの間にか、タイトルの五十音順ではなく、主演俳優や監督ごとに関連作品をまとめて配架するようになり、僕としてはかえって棚から棚へ見て歩く楽しみが奪われてしまったように感じていた。

 最近では、上映当時大ヒットしたような映画でも、上映後(わずか)10年も経てば探し出すのが大変で、レンタルビデオ屋に図書館的な役割を求めている僕としてはガッカリしている。

 最近、大手古本屋フランチャイズチェーンの品揃えもレンタル店的になりつつあるように思う。連載当時随分人気のあった漫画でも、少し時間が経つと店頭から姿を消してしまう。

 最初にそれを感じたのは、去年、韓国映画の『オールド・ボーイ』(パク・チャヌク監督 2003年)を観て、原作漫画の『オールドボーイ』(土屋ガロン(作)/嶺岸信明(画) 1996年 双葉社)を読んでみようと思ったとき。大して探しはしなかったが見つけ出せず、結局現在まで読まずにいる。ついこないだも、日本映画『鉄コン筋クリート』(マイケル・アリアス監督 2006年)を観て、原作漫画の『鉄コン筋クリート』(松本大洋 1993〜1994年 小学館)を探してみたのだが、やはり見つけられなかった(って言うか、両作品とももう15年近くも前の作品かぁ…)。

 こうなると、将来的に自分が重宝するのはビデオ・オン・デマンドみたいなサービスかなぁ、と思う。DVDや漫画の現物を大量に並べておくのにはコストがかかる。デジタル化してしまえば、その物理的なスペースや管理コストを大幅に削減できる。アマゾンのロングテールビジネスと同じで、観る・読む(つまり、買う)人がほんの少しいるだけで1冊当たりのコストをペイできるだろうし、「ここでなら人気のない映画や古い漫画を観る・読むことができる」となれば人も集まるだろう。そういうインターネット図書館(まさに「デジタル・アーカイブ」?)みたいなものに期待せざるを得ない。

 これまでは「コンピュータの画面上で文庫や漫画を読むなんて、何か馬鹿バカしくない?」と思っていたのだが…。それしかないなら仕方ない。別にGoogleを応援しているわけではないけれど…。