Cogito Ergo Sum.

我思う故に我あり

True "Social Bookmark"

 僕が読むような学術雑誌のうちメジャーなものはだいたい電子ジャーナル化されている。10年前に論文を読むといえば、図書館に行って書庫から雑誌や本を探し出しコピーをとるところから始めたものだが、今では論文を探すのもインターネットの検索機能を使うし、出版社のデータベース(あるいは著者自身のWebページ)からPDFファイルをダウンロードすることで、たいていの新しい論文を読むことができる。僕は、紙に印刷したものを読む方が楽なタイプだが、コンピュータ上で読むのであればプリンタも不要である。

 さて、インターネットを利用して何か面白いことはできないかという雑談から生まれたアイデアがある。ある論文を読んだ感想やコメント等をWebならではの方法で共有できないかというアイデアだ。例えばこうだ。あるサーバーに無数の論文のPDFファイル(もちろんPDFファイルである必然性はない。最低限テキスト情報があればいい。)を蓄積しておく。読者は、そのサーバー上で読みたい論文を検索して、サーバーから送られてくるテキスト情報をWebブラウザ上で読むわけだが、「あ、ここ重要」というところにマークをつけることができるようにする。紙に印刷した論文に下線をひいたり枠で囲ったりするのと同じだ。このマーキング情報を(リアルタイムでもいいし、あとでまとめてでもいいが)サーバーに送信し蓄積していくのだ。

 この情報をどう用いるか? 皆がマークをつけた箇所を濃く、誰もマークをつけない箇所を薄く表示することにするのだ。多くの人が同一の論文を読んでマーキングを行えば、皆が重要だと思っている箇所だけが目に飛び込んでくることになる。何せ誰もマーキングしなかったところは消えちゃっているのである。(あるいはこれを3D表示にして、皆がマーキングした箇所を文字通り飛び出させてもいいが、これは読みづらいだろう。)要するに、これ、皆でその論文の要約をつくっているようなものだ。

 問題は、インセンティブコンパチビリティー、つまり、どうやって個々の読者にマーキングさせるかだが、これも案外簡単に実現できるのではないかと思う。「自分と似たようなマークのつけ方をしている他の読者のマークした箇所を濃く表示する」という機能を追加すればよい。つまり、自分と似たような観点からこの論文を読んだ他の読者がどこに注目したのかを知りたければ、自分がどこに注目したのかを自己申告しなければならないようにすればいいのだ。

 僕が思いつくようなことは既に誰かが思いついているだろうし、Googleや「はてな」がもう実現しているかもしれない。まだ実現されていないのだとしても、そのうち実現されるだろう。