Cogito Ergo Sum.

我思う故に我あり

僕の飲酒行動の謎

 年末以来、禁酒している(と言うか、自分としては「もう一生酒は飲まない」つもりの「断酒」なのだが)。先日、誕生日だったので、完全ノンアルコールビールキリンフリーを飲んでみた。350ml缶2本。

 飲んだとき不思議だったのは、酔っ払ったような気分になったこと。頭に血がのぼっているような感覚があったし、動悸が早くなっているような気もした。キリンフリーはアルコール度数0.00%で、飲んだあと自動車を運転しても大丈夫、というところが売りなのだが…(とっさの判断力みたいなものが平常通りだったのかテストしてみたい気分。呼気からアルコールが検出されなくても、認知能力みたいなものが低下してるんだったら意味がない)。

 今から思い出してみてもっと変だと思うのは、本物のビール(ビールに限らずお酒一般)を飲むときに現れる僕の飲酒行動の癖みたいなものが現れていたことだ。

 僕は、一度飲み始めると、1缶飲み干した直後に次の缶を開けてしまい、寝てしまうまで飲み続けてしまう(幸い、元々お酒は強くないので、500mlの缶チューハイ2〜3本で寝てしまうが。何回か限界に挑戦してみたことがあるが、500mlの缶ビール4本は飲み切れない)。

 アルコール依存症というのは、薬物依存症の一種で、飲酒行動をコントロールできなくなってしまう。特に飲みたいわけでもないのに習慣的に飲む「習慣的飲酒」を続けていると、やがて「今日は絶対に飲まない」とどんなに強く心に誓っても飲酒衝動に打ち克てなくなってしまう。一度アルコール依存症になってしまうと、二度と元には(飲酒行動をコントロールできるようには)戻れないのだそうだ。子曰く「アルコール依存症は、漬物になったキュウリと同じです。二度と元のキュウリには戻れません。」10年間一滴もお酒を飲んでいなかった人が、たった一杯飲んだだけで元の木阿弥なんだそうだ(覚醒剤なんかを思い浮かべてみれば、薬物依存ってのはそういうものなのかな、と思う)。

 アルコール依存症の専門家に言わせれば、習慣的飲酒が身についてしまった段階で「アルコール依存症」だと言う(社会生活を問題なく営めているかどうかに関わらず)。僕は、自分が性格的にズルズルと落ちていきがちなタイプであることを知っているので、軽い気持ちで断酒することにした。「軽い気持ち」では決行できない段階に進んでしまったら僕の場合もう手遅れだ(僕が「強い気持ち」で断酒を断行できるとは到底思えない)。ま、半分シャレなんですけど。シャレで断酒。話の種にバイアグラ飲んでみるようなもの。

 でだ。先日キリンフリーを飲んだとき、1本目を飲み干した瞬間に僕は冷蔵庫の扉を開け2本目の缶を開けてしまった。誰にとられるわけでもないのに。まさに、本物のビールを飲んでいるときと全く同じ行動なのだ。幸い2本しか買ってなかったので2本でやめたが、3本あったら続けざまに3本とも飲んでいただろうと思う。

 これって…、どういうことなんだろう? 僕の飲酒行動には、アルコール依存症によって引き起こされている要素と、そうじゃないものによって引き起こされている要素があるんだろうか(飲酒に限らず、「いけないいけない」と思っているのにやめられない、「そんなことしたくもない」と思っていることをついしてしまう、という面が僕にはかなり色濃くある)。それとも、アルコール依存症的な行動が、「ビール味」という刺激によって引き起こされたんだろうか。

 前者だとしたら、僕がある限りのお酒を続けて飲み続けてしまうのには、アルコール依存症とは別の原因があるのかもしれない。僕はアルコール依存症ではないかもしれないから、その「別の原因」を除去できたら、再び飲酒行動を自分でコントロールできるようになるのかもしれない。

 後者だとしたら…、それはそれで面白いな、と思う。アルコール依存症的な飲酒行動がノンアルコール飲料に対しても現れるのだとしたら…、そんなことが自分の身に起きているのかもしれないと思うと馬鹿バカしいが、学問的には面白い。