Cogito Ergo Sum.

我思う故に我あり

ステレオ感の衝撃

 小学生の時、ステレオというものを知った時には衝撃を受けた。右のスピーカーと左のスピーカーからそれぞれ異なる音声を流すと、音が立体的に聞こえるのだ。しかも、左右のスピーカーから共通して流れている音声は、そこにはなにもない、左右のスピーカーのちょうど真ん中から聞こえてくるのである。まず、そのことそのものが不思議だったのと、モノラル音声と比較した時のステレオ感、音の広がりに感動した。

 次にステレオに感動したのは、ヘッドフォンで音楽を聴いたときだ。ヘッドフォンでは、「左右のスピーカーのちょうど真ん中」というのは頭の中だ。つまり、頭の中から音が聞こえてくるのだ。こんなことはヘッドフォンを使わない限りあり得ないことだから、現代人だけが享受し得る感覚なのだ。例えば、斉藤由貴の歌う名曲『May』の中で彼女が「すきよ」と囁く一節があるのだが、これなんかまさに、世界の中心で愛をさけぶ、である※。

 中学生の時にサラウンドサウンドというものを知った。スピーカーの数をもっと増やすのである。例えば現在主流の5.1chでは、スピーカーを6個配置する。フロントの左右にセンター、リアの左右で5チャンネル。これに(サブ)ウーハーを加えて5.1ch。リスナーはスピーカーに囲まれた空間の真ん中に座る。こうすると音に包まれるわけだ。音楽に抱かれたり、後から耳元を弾丸がかすめていったりするのである。

 サラウンドサウンドを実際に体験したのはそれを知ってから随分経った27歳の時だった。当時、物置小屋みたいな一軒家に独りで住んでいたので、どんな爆音を鳴らしていても平気だった。大音量サラウンドシステムの完成である。凄いんだよもう、体が音に包まれるんだよもう。不思議な浮遊感すらあるんだよ。

 その時に手に入れたバカみたいに大きいスピーカー4つを今でももっている。正直あまり活躍させていない。だから、だからこそ、AVアンプを手に入れて、プロジェクターをどうにかして、ホームシアターを築き上げたいのだ。


※ その3〜4秒前にウィスキーをストレートでゴクリとやるのがポイント。カーッとくるのと「すきよ」がぴったり重なり、鼻血が出たりします。