Cogito Ergo Sum.

我思う故に我あり

『フルマラソンがもう一度速くなる30のスイッチ』(岩本能史)★★★☆☆

 『フルマラソンがもう一度速くなる30のスイッチ』
 岩本 能史(著)
 2011年
 アールビーズ
 ★★★☆☆

 既にフルマラソン完走経験が何度もあり、しかしこのところタイムが伸び悩んでいる…、という市民ランナーに向けて書かれたマラソン・ランニング指南書。

 全3章構成。「ランニングフォーム・ランニングシューズ」「マラソンの常識・非常識」「岩本流マラソンレーニング」といった内容。「30のスイッチ」のタイトルの示す通り、30個のトピックが大まかなテーマごとに3章に分けられ並べられている。

 本文125ページ程度とかなり薄め。A5判の紙面の上下の余白が広く(何となく)素人っぽいレイアウト。文章は口語体で、スイスイ読み進んでいける。もの凄く本を読むのが遅い僕でも数時間で読み終えることができた。

 第3章の「岩本流マラソンレーニング」は、同じ著者の『限界突破マラソン練習帳』(2016年 講談社)の「原形」的なものと言えそう。逆に言うと、本書の第3章に示されているトレーニングメニュー例をより充実させ、1冊の本としてまとめたものが『限界突破マラソン練習帳』であるとも言えそうだ。

 著者がランニングのコーチとして全国的な知名度を得たのは、『非常識マラソンメソッド』(2010年 SBクリエイティブ)、『非常識マラソンマネジメント』(2011年 SBクリエイティブ)等が売れた後ではないかと思うのだが、「原形」と言えば、本書がこれらの本の「原形」と言えるのかもしれない。薄い本だが、逆にその分だけ明瞭に著者の考えが顕れているように思う。

 本書の内容で1つだけ注意した方が良さそうなのは、第1章で述べられている「シューズ選び」について。本書が刊行されたのは2011年で、現在市場を席巻しているようなタイプの「厚底ランニングシューズ」はまだこの世に存在していなかった(先駆けとなったNikeのVaporFlyが発売されたのは2017年)。現在であれば、「シューズ選び」に関して(ついでに「厚底ランニングシューズを履いた場合の適切なランニングフォーム」に関して)、著者も本書とは異なる見解を提示するのではないかと思う。

 ちなみに本書は、マラソン大会の開催・運営やランニング・マラソン関連情報の発信を行っている「アールビーズ」から刊行されている(レイアウトが妙に素人っぽいのはそのため?)。本書が(オンライン書店を含む)一般の書店で取り扱われている(いた)のかどうかよくわからない(笑)。僕自身はアマゾンのマーケットプレースに出品されていた古本を購入した。

 本文125ページ程度。