Cogito Ergo Sum.

我思う故に我あり

『マラソンランナーへの道』(鍋倉賢治)★★★★☆

 『マラソンランナーへの道』
 鍋倉 賢治(著)
 2018年
 大修館書店
 ★★★★☆

 「フルマラソンを歩かず完走」を目指すサブ5レベル、あるいは、既に完走を果たしており「次は4時間切り!」と鼻息の荒くなっているサブ4レベルのランナーを対象とした、マラソン・ランニング入門。サブタイトルは「賢く走るための理論と実践」。

 全7章構成。「エネルギー生成過程から見たランニングの科学」「トレーニングの種類、目的、計画」「コンディショニング」「レース」といった内容。思っていたよりも小さめの判型サイズ(四六判)の本で、余白は少なめだが、スラスラ読み進んでいけた。

 数年前に同じ著者による『1時間走れればフルマラソンは完走できる』(2007年 学習研究社)を読んだことがあったが、ジョギングの経験すらないような読者を対象としており、(その時既にフルマラソン完走経験のあった)僕には少しモノ足りない内容だった。本書の内容はバッチリだった。

 著者は筑波大学の先生で、著者の開講する「つくばマラソン」という授業は30年続く筑大名物(シラバスを見てみたところ(笑)、今年度(2023年度)も開講されている!)。体育専攻とは限らない一般の筑大生を対象に、筑波大学も主催者に名を連ねている秋の「つくばマラソン」完走を目指す!という講義+実技形式の授業で、受講生の9割以上が見事完走を果たすのだという。

 僕自身は、ジョギング系SNSジョグノート」(現在は惜しくもサービス終了)上で2007~2016年に連載されていたコラム『鍋倉教授の楽しく走ってステップアップ講座』で著者のことを知った(最初は助教授か准教授だったような気が…(笑))。各回のコラムの文章は短いのだが、普通のランナー・ジョガーが知りたいと思うような内容を学術寄りの視点からわかりやすく解説しており、コラムの内容をまとめて書籍化して欲しいと思っていた。それが本書のようだ。

 本書の内容は、運動中に身体の中で起きているエネルギー代謝の仕組みの話から始まり、有酸素能力、LT(乳酸性代謝閾値)、脂質代謝能力、等々の向上のためにどのようなトレーニングを組み合わせて行うか、という話がメイン。ランニングフォームやストレッチ、普段の食生活、等に関する記述は少ない。学術寄りとは言っても、学術専門書のようなお堅い本ではなく、一般向けに非常に読み易く記されている(この点に関しては、ひょっとするとゴーストライターのような人がいるのかも)。

 僕自身は「ペース配分は、身体に蓄えられている糖質・脂質のエネルギー配分」といった見方に目から鱗が落ちるような想い。言われてみれば全くその通りなのだが、これまでペース配分を体力やスタミナといった観点からしか考えていなかった。「ランニング中に身体の中で行われているエネルギー生成過程」といった見方が僕にはなかった。

 本書の副作用として、心拍計が欲しくなってしまった(笑)。今なら安価なスマートウォッチを手に入れればいいのかな…?

 続編の『続・マラソンランナーへの道』(2018年 大修館書店)も刊行されている。是非続けて読んでみたい。

 本文185ページ程度(他に、索引、付録、参考文献として10ページ程度)。