Cogito Ergo Sum.

我思う故に我あり

『50歳で100km走る!』(鏑木毅)★★★★☆

 『50歳で100km走る!』(鏑木毅)
 鏑木 毅(著)
 2022年
 扶桑社
 ★★★★☆

 「50代」で「ウルトラマラソン」という「それ需要あるの!?」と呆れてしまうような(笑)ニッチなマラソン・ランニング入門。著者は(野山を駆け回る)トレイルランニング界のスーパースター・鏑木毅氏。サブタイトルは「生き物としての力を取り戻せ!」。それにしても、カバー表紙のイラストはちょっと異様(笑)。

 全8章構成。「50歳(代)なら100km完走できる!」「50代以降『速筋』が衰える」「100kmマラソン完走3年計画」「100km完走のための身体づくり」「短時間高強度トレーニング」「抗酸化食事術」「疲労回復・身体のケア」「トレイルランニング」といった内容。A5判で、上下の余白が広く、余裕のあるレイアウト。本文165ページ程度と分量も少なめ。

 今や「マラソン・ランニング」に関する入門書は本屋のスポーツコーナーを覘いて見れば本当にたくさんあるが、「50代」で「ウルトラマラソン」なんて本は見たことがなかった(笑)。著者の名前はもちろん知っていたが、去年(2022年)出た本で古本価格がまだそれほど下がっていなかったので、図書館で借りて読んでみた。第1章はエッセイのような趣きで正直「買わなくて良かったな」なんて思ってしまったのだが…、第2章以降「なるほど!」と面白くなってきた。

 著者が言うには、50歳以降急速に衰えてくるもの、それは「速筋」と「疲労回復のスピード」だと言う。筋肉には「速筋」と「遅筋」があって、マラソンで必要になるのは「遅筋」のように思われるけれども、50歳を過ぎて何故若い頃と同じパフォーマンスを発揮できなくなってしまうかと言えば、ズバリ「速筋が衰えてしまうから」、そして「若い頃と同じ休息では疲れがとれないから」。そこで、「50歳を過ぎてもウルトラマラソンを完走したい!」という稀有な人は、(ウルトラマラソンというフルマラソンよりもユックリ走る競技のために)「『速筋』を鍛える『短時間高強度トレーニング』を取り入れよ!」、そして「これまでよりも完全休養日を多めにとれ!」というワケ。

 「はは~ん、なるほど」という読後感。50代でも挑戦するのが100kmマラソンではなくフルマラソンなら(「短時間高強度トレーニング」を取り入れなくても)ゆっくりジョギングしているだけで完走(自体は)できる。また、30~40代なら、これまたゆっくりジョギングしているだけで100km完走可能である。「50代」で「100kmマラソン」だからこそ「短時間高強度トレーニングが必要」という話になる。それでこういう本ができあがったワケだ。

 「短時間高強度トレーニング」と言うと難しそうだが…、坂道ダッシュ、その場でジャンプ、縄跳び、階段1段飛ばしダッシュ、のようなトレーニングのこと。これを週1~2回、10~20分程度行え、とのこと。第5章には、著者自身がやって見せてくれている写真が掲載されている。

 何故僕がこの本を面白がっているかと言うと…、個人的な話をしなければならない。実は僕は、30代半ばからジョギングを始め、38歳でハーフマラソンとフルマラソンに初完走、40歳の時に100kmマラソンに初完走している。そのまま1年に1回だけ100kmマラソン大会に参加し続けてきたのだが…、このコロナ禍で毎年参加していた大会が3年連続で中止になり、モチベーションがガタ落ち。ほぼ3年間ジョギングをサボり続けていた間に50歳を迎え、スッカリ身体が衰えてしまっていることを4年振りに100kmマラソンに挑戦することになった今年ヒシヒシと感じていたのだ。

 僕自身は「体育会系」でもなんでもない。身体を動かすこと自体は好きなのだが、「練習」が大っ嫌い。中学の時は陸上部に入部したが、練習に参加したのは最初の数日だけ、という絵に描いたような幽霊部員。中体連の日に学校をサボれることだけが楽しみで退部しなかったに過ぎない。

 30代半ばでジョギングを始めたのは、メタボ対策と気分転換のため。今も自分が「アスリート」「ランナー」であるというツモリは全くない(僕は「ジョギングする人」=「ジョガー」に過ぎない)。僕にとって「ジョギング」は「散歩」と一緒で「スポーツ」ではない。むしろ「散歩」気分でジョギングしているだけで「100km完走できてしまう」ところが面白いのだ。

 ところが…、4年振りの100km挑戦のために1月にジョギングを再開したものの、2月に右膝に痛みが出て未だに治らない。フと思い立って体操をしてみたら、肩(肩甲骨周り)や股関節が信じられないホド凝り固まっている。椅子に背筋を伸ばして座っているだけで背中(広背筋?)や腰(腸腰筋?)がツラくなってくる始末。走っていなかった間に、下半身だけでなく上半身の筋肉も体幹の筋肉もスッカリ衰えてしまった。

 ショックだったのは、商業ビルの階段を地下1階から地上6階まで1段飛ばしで駆け上がってみたところ(良い子は真似しないように(笑))、4階辺りで続けられなくなってしまったこと! 数年前には縄跳びを数分間続けても「これでトレーニングになってるのかな?」と感じるホド全く疲労が溜まらなかったのに、今や1分間続けるだけで途中でツラくなってしまうこと! 「50歳以降、速筋が急速に衰える」ってこれだ!

 ちなみに、100kmマラソン大会の公式記録を見てみると、「50代で完走」なんて男女ともザラである(と言うかそもそも、参加者の年齢・性別構成を見ると、40代後半~50代前半くらいの男性ランナーが一番多い)。男性なら70代で完走している人までいる。そしてそれは、「アイアンマン」でもなんでもない、普通のオッサン、オバサン達なのだ。僕も今年、この腐るホドいる「50代完走者」の仲間入りを果たすツモリだ。ここは著者を信じて、坂道ダッシュ! その場でジャンプ! 縄跳び1分! 階段1段飛ばし!をやるしかない!

 本文165ページ程度。